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「キキッ、ご主人、来ましたよ」
腰元から聞こえた声に反応し、少女は左後方へと首を回した。
「あ、こんな時間に呼び出してゴメンね。諸事情で夜にしか出歩けなくて。はい、これ私が作ったチョコ。貴方にあげる!」
背後に立っていた男は無表情で右手を振り上げた。その手には二本の五寸釘が握られている。
「黙れ。お前の正体は既に掴んでいる。そのチョコはお前の血を固めて作った“血ョ固”で、それを食えばお前の従順なしもべになってしまうのだろう? なあ、吸血鬼さんよ」
少女は口元から小さな牙を覗かせ、ゆらりと立ち上がった。
「やれやれ。もう少し糖度を高めてから頂戴しようと思ったのじゃがのう。ならば今すぐにその生臭い血を吸わせて貰うとしようかい……!」
バサバサとポシェットから一匹の蝙蝠が飛び立ち、二人の血闘が幕を開けた--
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