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そして秀明は人生四度目の出発点に立った。一度目は文字通りこの世に生を受けた日、二度目は記憶を失い全裸で見つけられた日、三度目は相良秀明になった日、そして四度目は二人の義弟を見守るために正しい判断を捨てた日だ。末弟の殺人を見て見ぬふりをすることは、秀明も同じ罪を背負うことになる。そして、末弟のために次男がお膳立てしていることを知っているだけでも、その罪は同じ重さになる。
それでも秀明は二人の義弟を見捨てられなかった。鳴海を、そして凪を、正確には他人なのだと分かっていても愛していた。全ては『親』から受け継いだものだ。どこの誰とも知れない子供を愛しむ住職夫妻の志を、秀明は真っ直ぐ受け取っていた。
───おまえは私の子供になればいいですよ。
それは魔法の言葉だった。
秀明の人生の全てともいえるその言葉は、波乱に満ちた彼の半生に終止符を打たせ、人のためにその身を捧げる後半生の幕を開けさせた。
■ E N D ■
作者注※倫理的な問題を論点にはしていません、あくまでただの創作物です
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