第1章

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手先が冷たい。 ただただ心配で、その想いだけで走り続けたのに、皮肉なことにもう日が落ちてきている。 もう諦めるしかないのか。 悔しいが、この寒さではどうにもならない。 とりあえずホッカイロを取りに家に帰ろう。 と、おもったら。 「ーーーーー探したよ」 僕の家の前に、彼女がいた。 大きな瞳に溢れんばかりの涙をためて。 「今日、どうしてきてくれなかったの?」 僕の言葉にビクッと反応した拍子に、彼女の瞳から涙が一筋落ちる。 しかしすぐに、下くちびるをかみしめながらこちらを見た。 「チョコ…失敗しちゃって」 そう言う顔が、不謹慎ながらとてもかわいくて、愛らしくて、ふっと笑ってしまった。 「そんなことだろうと思った」 僕は、ポケットに入れていた箱を彼女に手渡す。 「え、なんで、どうして、、、?」 それは、ハート型のチョコレート。 「だってほら、きみ、チョコ好きだから」 「そうだけど、、、」 「街中で彼女が好きなものを売ってるんだもん。そりゃあげたくなるよね?」 彼女がふふっと笑う。 「そうだけど、でも、2月14日は、女の子から男の子にチョコをあげる日なんだよ」 「僕にとっては2月14日も、15日も、16日も、      毎日、君に笑顔をあげる日なんだよ」
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