記憶をなくした日

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 身体はふわふわと舞い上がる、首を動かそうにも不思議な違和感。舞い上がるだけで違和感の正体なんかわかるはずもない。かろうじて顎を引き 上腕二頭筋を視界に入れることができた、色素がなく、水路に流されるアナカリスのように無垢だ。   ー「日差しのきつい夏に家族4人で出掛けた」  ふと頭に浮かんだ記憶という事実。そこから出た言葉は人として確かな力のあるものなのだろう。そして映るはビリビリに破った新聞のような断片的な(きおく)。  無性にピースをつなげたくなるが できるわけもなく、かろうじて見えた自分であろう眼差しの近く、 先に映る景色には家族4人が映っている。 誰から見ても仲良き家族、、、 まああくまで一見しての話だ・・・・・・。    4人以外は特に親しげに見える人はいない。 いや、居るといえば居るのか? 色素のない傍観人の自分と同じように色素のない4人家族 もう消えそうだ。    彼らが消えてどこに行くかは知らない。今の私、今の彼らがどういう存在なのか知らないし、自分たちの「存在」という言葉にこたえてくれる人はいないだろうから・・・・。   不思議なことがある。 4人のうち一人の女の子を3人が見た時、まるで私が見られているような感覚を背中に覚えるのだ。 決して幸せを感じるようなものではない。 3人の瞳は暗闇をのぞき込む猛禽類のようで、彼らの目を見た日には狩られてしまうのではないか・・・そう思う感覚だ。   4人は私を見て近寄って来たりはしない。ただ、遠くから何かを呟くのを私は傍観しているだけの他人なのだ。呟いている内容なんて私には解りはしないがやはり不思議と自身が呟かれているくすぐったい肌触りがある。 さあ、もう暫く家族を見てみよう。どこか私思わせる、あの女の子を見てみよう。きっと誰かが自分の「存在」を教えてくれると信じて・・・・・・。  それから数時間経った。  何も変わらないことが繰り返される数時間、「正直退屈だ」 そう呟いた瞬間、私はその4人のうちの小さな女の子に吸い込まれた。いや、女の子の心が私の心に投影した。それまでになかった、まるで私の過去を見ているように    過去を思い出す時は気分が高揚したり、暗くなったりするものだろう。しかし違う、自分は何の感情も浮かんでこない。ただただ、鏡写しされている  もし、もし今投影された物が本当であるなら、整理する必要があるだろう。  女の子は母さんと思われる大人の女性と手を繋いる。母さんと思われる人の手は暖かく、私を包み込み、守っているかのようである。   (母というのはこんなにも暖かく、強いものなのだろうか。握る手だけで伝わってくる生き物への愛、自分が分からない今の自分には分かりえない事柄だ。)  
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