妹を選んじゃいけませんか？

記憶をなくした日

母さんと思われる人の温もりの中、小さな女の子は心に闇と怒りのこもった憎悪を抱いていた。　
　しかし、なぜ怒っているかは分からない。定かではないのだ。
「もうっ、何なのよ。こんなの嫌・・・暗くて。私の感情だっていうの？　そんなのイヤ・・・・誰か・・・。」

　言うまでもなく、女の子を投影している感情は私にも伝わっている、それゆえに私にも憎悪の感情が伝わってくる、理由、形、経緯のわからない感情ほど恐ろしく万有引力を導くものはない。
　私が抱くような生優しいものではなかった。頭が狂いそうになる。
「落ち着くのよ、泥沼に呑まれてはだめ」
　冷静になろうと私は、今の状況を整理することを再開した。整理することによってこの沼から這い出ようと・・・・・・。全くさっきから整理してばかり　　
　女の子と母さんが手を繋ぎ、女の子の左手に智絵。智絵の左手に父さんがいた。
「智絵？なぜ名前がわかったの？あの家族を私は知らないはず」
直感的に放った名前、それが何を示すのか
「待って、あの女の子は私なの・・・・・・　」

四人は仲良く手を繋いでいるようである。
　しかし、私は楽しげな雰囲気ではない。それどころか二人の・・・・・・・いや、三人の顔を見ようともしない。

〈それが私だって言うの？待ってよ〉
戸惑い混じりの笑い、色素をもたない私が笑った最初の記憶である

　<喋りたいが、喋れない。>
女の子の感情が映る。私からすれば小さな女の子が憎んでないで声を発しろよって感じなんだが、そんなことできるわけない。
これは破れた新聞の一片、編集し終わったものを変える色なんてない。

　－－しばらくして、女の子たちの行く手に交差点が映った。
　今日は不思議と人（実体のない彼ら）が少なく、車の音しか聞こえてこない。そういう映像

いつもと違う雰囲気に憤りさえ感じている様子。