第7章 キレイになりたい

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本当は俺が触れたりしないで女の子に彼女を支えてもらった方がいいのはわかってるんだけど、何分にも急を要する。とにかく一刻も早くここから菜摘を離したい。他人に事情を説明するのも難しいし。 菜摘が何に反応してるか誰かに気づかれたくない。 「ごめん、こいつ朝からちょっと体調悪いんだ。送ってくわ」 「大丈夫?誰かついてった方がいいんじゃない?女の子とか」 先輩の荻野さんが心配そうに口を挟む。 「ありさ呼びます。どうせあいつ、一緒に住んでるわけだし」 彼女は今授業中だが、メール入れとけば終わり次第すっ飛んでくるだろう。 「そうか、じゃあ大丈夫かな。…何か手助け出来ることあったら遠慮なく言って」 「ありがとうございます」 やむなく菜摘の腕を取り身体を支えるようにして部室を辞す。中から無遠慮な声が飛んできた。 「大丈夫か新崎。二人きりで変な気起こすなよ、絶対」 「いやいやあいつに限って。そんなことしたらありさに顔向け出来ないだろ。ないない絶対」 「そう考えるとあんな安全な男もまぁいないな」 …そこ笑うとこか! こんな非常時なのにそれなりにむっとする。いやそれどころじゃないって。俺は菜摘の様子を伺った。 あまり状態はよくない。顔色は真っ青だし、俺に触れられていることについても意識する余裕もないみたいだ。そう考えると、あの時、南雲に遭遇した時の方がまだ俺を跳ねのけるくらいの元気があっただけマシだった気がする。 とにかく部室を離れて建物の外に出る。ずっとこのまま俺に支えられて無理に歩かされるのも可哀想かなと思い、ひとまず庭の片隅に置かれたベンチに座らせた。ある程度落ち着かせてから部屋へ連れて帰った方がいいかも。 「水かお茶?」 「コーヒー…。ブラックで」 蒼ざめながらもそれなりに主張してくる菜摘。意外に余裕ある。 「気分悪いのに大丈夫か、胃に悪くない?」 「カフェイン欲しい…」 そうですか。ちょっと菜摘らしさが戻ったことで俺もほっとして、自分にもコーヒー(微糖)を買ってベンチに並んで座る。キャップを外して缶を手渡してやると、ぐっと一口飲んで、ふうっとため息をついた。 「少し落ち着いてから移動するか」 「うん。…でも、大丈夫だよ。歩ける」 「本当か? 」 思い出して、携帯を取り出しメールを打ち始める。 「ありさ呼ぶからな。授業が終わったら来てくれるよ」 「悪いよ。ありさ、まだこの後も授業あったんじゃないかな」
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