第7章 キレイになりたい

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そうは言われても、先日の南雲の野郎とのすれ違いを目の当たりにしてしまった身としては、やはり捨て置けない。実際、そろそろ明るい時間帯の送り迎えまではもう大丈夫かな、と考え始めていた矢先だったのだが。 まぁ菜摘の方がどう感じてるかはともかく、俺の方は彼女と話しながら歩く時間は苦じゃないから構わない。問題はむしろ、菜摘にとって彼氏との時間って何なのか、本当に彼氏ってお前に必要な存在なのか?向こうにとってお前が必要ってだけで無理したり我慢してないか?ってことなんだけど…。 それを確認しちゃうとマジでがっくり来そうでなかなか勇気が出ない。 部屋のドアの前に立つ菜摘を、階段の上で背後から見守る。いつもチャイムを鳴らさずに勝手に鍵を開けてさっさと入っていくのだが、今日は何だか時間をかけてる。と言うか、躊躇ってる。何だろう、何かあったのかな?彼氏と…。 菜摘が俺の方を振り向いた。 「…新崎、もういいよ。帰っても大丈夫」 「いや、中入るまで一応見てるよ」 俺はちょっと不審に思いながら言葉を返した。いつもそうしてるのに、何言ってんだ、今日は。 「ここまでわざわざ送ってきてんのに、最後の最後で目を離すのはなんか気になるし。いいから入れよ。そしたらちゃんとすぐ帰るから」 「うう、…ん。まぁ、そっかぁ…」 何だかすっきりしない声を出し、バッグを開けて鍵を取り出す。と、思ったら、ちょっと俺に背を向けるようにして、首の後ろに手を回した。…あ。 「外すんだ、それ」 ネックレス。 「うん、…まぁ」 手早くしようとしてるらしいが、不器用なので結構時間かかってる。俺に見られてると焦るのでますます四苦八苦しているようだ。何とかやっと外し終える。 「それってどういうこと?もしかして、他の男にもらったもの、彼氏の前でつけられないってこと?」 思わず口から疑問がそのまま出てしまう。自分でも不満げな、拗ねたような声に聞こえるのがなんか情けない。 「いやそんなんじゃないよ。…なんかさ、金属製のものが駄目なんだよ、体質的に。接触するわけじゃないからわたしが着けてる分には構わないだろうと思ったんだけど、人が着けてるのを見るのも割と嫌みたいで…」 ちょっと言いにくそうにぼそぼそ説明する。俺は内心ますますむくれた。ふぅん、彼氏に外せって言われたら素直に外しちゃうんだ。
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