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その少し前。
家を出た怜史は荒い息をしながら日野屋に向かっていた。
なんでお姉ちゃんにあんなことを言われなくてはいけなかったのか。
思い出してもまだイライラした。
日野屋に着いたが、怜史は裏の勝手口から入った。
「おばちゃん。」
「あら、怜史。どうしたん?」
「健ちゃんいる?」
「上におるで。遊びに来たんか?」
「うん。」
怜史は靴を脱いで階段を上がる。
「あんた晩ご飯食べたん?家帰ってへんのか?」
制服を着てる怜史に真知子が階段の下から声を張る。
「食べてへん。」
「食べるか?」
「うん。」
「ほな出来たら言うさかい。」
「はあい。」
階段を上がってすぐの部屋に入ると健介ともう1人がゲームをしていた。
「お、怜史。どうした?」
「遊びに来た。」
怜史は部屋の奥にある本棚から漫画を数冊取って健介達のいるローテーブルには参加せず、壁にもたれて座った。
「あれ?もしかしてイッチーの弟?」
「そうそう、会ったことある?」
「去年帰って来たときに商店街でイッチーとおるところすれ違ったわ。」
「あー、なんか言うてたなぁ。」
怜史は会話に入らずに漫画を黙々と読んでいる。
「イッチーまだ仕事中?」
健介が怜史を振り返って聞く。
「そうちゃう?」
怜史は顔も上げずにこたえた。
「純一と伊藤は一緒に来るって?」
「うん。さっき純一拾ったって連絡きたしもうすぐちゃう?」
どうやら今日は健介の友達がたくさん来るらしい。
どさくさに紛れて泊めてもらおう、と怜史は心に決めた。
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