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部屋に入ると途端に静かになった。
先生と掴みあっていた怜史が目を丸くして壱野を見ている。
壱野は怜史を一瞥して睨んでから先生達にお辞儀をした。
「お兄さん来てくれはったことやし、な、怜史、座って話しよか。」
肩を叩く先生の手を、怜史は振り払う。
壱野は無言で怜史を睨んだ。
「なんで壱野くんなん?」
家に連絡すると言われ、怜史は諒太が来ると思っていたのだ。
「諒太が良かった?」
表情を変えず言って、怜史に一歩近づく。
怜史は二歩後ずさった。
「仕事…は?」
壱野は一気に怜史との距離を詰めた。
怜史は、殴られるっ…と後ずさりながら右手を上げる。
壱野は左利きなのだ。
怜史の読みは外れた。
左肩を思い切り掴まれてしまった。
痛くて顔を歪める。
「仕事?じゃあお前学校は?授業は?なんでちゃんと受けてへんの?」
怜史は目を合わせない。
壱野は右手にグッと力を込めて「なぁ?」と返事の催促をする。
「痛い…離して。」
怜史が壱野を見上げて訴えたその瞬間、
パァンッ!
乾いた音が部屋に響いた。
怜史は一瞬よろめいたが、左肩をがっちり掴まれていたため衝撃をモロに右頬に受けることになった。
「お前が勝手に授業受けんとふらふらして絡まれてんのにそれで止めてくれた先生にも暴言吐いて暴れるてどーゆうつもりなんじゃ。」
怜史は更に強く掴まれる左肩の痛みに耐えるのに必死だ。
「理由があるんやったら説明しろ。それができひんのやったら謝れ。」
怜史は胸を大きく上下させて呼吸している。
「痛い…。」
「当たり前やろ。俺がどんだけキレてるかわからんのけ?」
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