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私は田舎で生け花を習っていました。
その流派は大きな流派から別れた新しいものでした。
住宅事情が変わるなかで、床の間や大きな花瓶のある家も少なくなりました。そこで玄関やリビングに置けるような小さな生け花のほうが求められるようになったのです。
私の流派のお家元は現代的な花も、古典的な花も学んだ……よく言えばそつのない、悪く言えば創造的でない花筋でした。
それが広く好まれるとわかっていらっしゃったのでしょう。
ところが、息子である若先生はそうではありませんでした。
生まれた時から花の教えを受け、周りには門弟の女性がたくさん居て、もっともっとと斬新な生け花を好まれたとか。
どこか影のある美形であったため、和服を着ても時代錯誤どころかしっくりくるのです。
青年となってからは若先生目当ての生徒さんも増え、あからさまな色目に古参の弟子たちは呆れていましたが。
生徒さんが増えるのは良いことだとカルチャースクールは若先生に任せるなど、大先生や奥様も黙認されておりました。
若先生の熱狂的な信者(といってもいいでしょう)は才能を褒め、容姿を褒めました。
その言葉は甘く若先生に絡み付き 、大先生の作品を攻撃するのでした。
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