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悠「お疲れ様」
蓮「あ、悠も上がり?」
悠「うん。今日は朝からだったからね。
…、所でさ、今日も来てたね“あの女の人”」
蓮「ああ…、」
悠「俺らベルの中でも有名だからさ、」
ベルボーイ 通称“ベル”の 柴田 悠はそう言葉を投げた。
この“テンペストホテル”のベルボーイの悠は
俺と同じ大学2年って事も有って気が合った。
通ってる大学も違うし、趣味なんかも全く違うのに不思議と話が合う。
休憩の一時の食堂で下らない話をする瞬間が無性に楽しい。
悠「つうか蓮、これから飲みにでも行かない?」
蓮「悠と?」
悠「いや、…さぁ、しつこいんだよ。
蓮を紹介してしてって女の子がさぁ…、」
蓮「は(笑)?、俺?」
悠「また、そんなすっとぼけてスルーしようとして…
やだな」
そう言う悠だって、その笑顔と甘い声でバイトの女の子達からの受けはいい。
悠「そのルックスで音大生でラウンジのピアニストって…、ずりぃわ。揃い過ぎて嫌味だよね。
この前見たよ。
ピアノ弾いてる蓮に、女の子がそっと紙渡す瞬間」
蓮「ああ…あれか」
悠「どうなのあれ、何書いてあんの、あーゆーの、」
蓮「部屋番号…と、連絡先?、」
悠「うーわ、エロッ!『今夜来て』みたいな感じ?」
蓮「だろうね。行った事無いけど」
悠「行かないのかよ(笑)可愛かったら行く?」
蓮「行かねーよ。俺嫌なんだよ‥そういうの」
高3バレンタインから本気で女の子と向き合えなくなった。
抱きたいとも思わない。
それでも試みた瞬間は何度か有ったし
それなりに色んな子と体は重ねて来た。
けど何かが足りない。
本当はその答えは分かってるけど知らないふりをしてる。
開けなくてもいい蓋も有るだろうと放置して鍵をかけて‥
悠「そういや明日、ラウンジに新人のウェイター入るから宜しくね」
蓮「知り合い?」
悠「俺が紹介したんだよ。ラウンジに人が足りなくて困ってるって言ってたから…」
蓮「へー」
悠「とりあえず、すっげーうるさいから覚悟しといて?」
蓮「ははは(笑)そうなんだ。」
悠「あんま度を越してうるさかったら無視していいから、」
蓮「そこまで強烈?」
大理石のフロアーに口元を押さえて笑う悠の声が柔らかく響いた。
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