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二日後。
ドロシーはハウライト執務室に入ると正面に数か月ぶりこの室の主と目が合い…瞬間に逸らした。
「なんだよ、その嫌そうな顔は?」
「いえ、なんでもありません」
ドロシーは目を合わさないまま短く答える。
「怒るな、これ終わったら休暇やるから」
ここ数年、ドロシーが何度も聞いたセリフ。今度も守られることがない。ハウライトが部下にした約束を守ることなど稀なこと。第3兵団所属の魔術師ならだれもが知っている。
ドロシーの固く握った拳をハウライトはチラッと見てふっと笑う。いつみても底意地の悪い笑いだハウライトの隣に立つ副官ラピスは額を抑えた。
「ハウライト様、任務内容を」
「ああ、これを見てくれ」
ハウライトは小さな紙袋を取り出し、中から小さな小瓶を出す。中には赤褐色の粉。
「何に見える?」
「薬粉の類ですか?」
ラピスが瓶に顔を近づけながら言う。
「ドロシー、お前は何だと思う?」
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