残されたもの

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ーーーーーーー ーーーーー 「なんだもうないのか」 朝飯にしているシリアルにかけようと思ったミルクが無くなってしまった。 さすがのあいつもこんなものまで買いだめはしてないだろうなと思いつつも、冷蔵庫の奥を覗き込む。 仕方ない、帰りがけにコンビニで買うか。 あのコンビニ、俺の好きなブランドのミルク置いてあったっけか? まあ違ってても仕方ないか。 冷蔵庫のドアを開けたままでふと思いに沈む。 …………そういえば、こんなものも切らさずにいてくれたんだな。 ーーーーー ーーーーーーー 「僕も実は、彼女から最近昔みたいに優しくなくなったとか言われて」 「そりゃ付き合い始めのころのテンションをいつまでも保つのは難しいよな」 「そうなんですよ! 」 もう何杯目か思い出せないグラスを多少乱暴にカウンターに置いてしまい、慌ててバーテンダーさんの方を見た。 よかった、こっちを見ていない。 「久々に会えたときはゆっくりしたいのに、なんか仕事がどうとか同僚がどうとか」 「ははは」 「挙句の果てに聞いてないの? とか怒られるし」 「ほんとに聞いてなかったんじゃないのか」 「いや、だって僕はカウンセラーでもないし、彼女は違う業界だからアドバイスもできないし」 「アドバイスなんかしなくていいんだよ」 「え? 」 「聞いてあげるだけでいいんだ。今、君がこうして私の昔話を聞いてくれているようにね」
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