残されたもの

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プロジェクトはようやく皆の合意をとりつけ、これで執行段階に移れる。 それはそれで大変だが、そこから先はそれぞれの仕事を現地のヤツに分担させ、俺は監督をする立場に回れるから少しは落ち着くだろう。 正月は香奈が前から行きたがってた温泉にでも行くか。 そう思いながらアパートのドアを開けた。 「ただいま」 返ってくる声はなかった。今日着くとメールしたはずなのに。出かけているんだろうか。 そういえばメールに返事が来てなかったな。 玄関に立ったとき、何故かわからないが、微かな違和感があった。 しかしもう夜も遅かったし時差も出てきて眠かったので、さっと熱いシャワーを浴びて寝ることにした。 ーーーーー ーーーーーーー 「帰宅してすぐ電話とかしなかったんですか」 「しましたよ。でもコール音が鳴り響くだけで。あいつ前にも携帯なくしたことがあって、またやらかしたのかなとか思っていました。とにかくこっちは眠くて、寝てる間に帰ってくるだろうって思って」
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