当夜

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 城之内浩也とその娘が身を隠す高台の潅木の茂み――廃棄された駐車場を覆うように林立している――には時折夜風が舞い込んだが、 それはただ生温く、 肌に触れる淀んだ空気に舐められているだけのように親子たちには感じられる。 だから気を張り詰め続けることが難しいのだ。  ――本当に今日ここは監視されているのだろうか?  鋭く辺りを見まわしながら城之内浩也が訝しむ。 今日がその日ならば警備員がいるはずだ。 が、 その気配が感じられない。 かといって浩也は不用意に行動する気にもなれない。 それには危険が大き過ぎる。 浩也には本能的わかるのだ。 政府直属の監視員――おそらく遠い海面を凝視しているはずだ――の姿が一人でも目に入れば逆に安心できるのだが……。 あるいは上空に報道目的ではないヘリコプターでも飛んでいれば……。
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