当夜

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 すぐ横の藪の中に目を移せば娘の早紀が浩也同様緊迫した面持ちで膝を地面に付け、 まんじりともせず身を固めている。 その腕の中には赤ん坊がいる。 母親同様、 息を潜めて動こうとしない。  浩也が今宵の情報を掴み、 一人でこの地に向かおうとしたとき、 素早く気配を察した早紀が同行を強く主張する。 その情景が脳裡を掠める。 わずか数時間前のことだが、 すでに遠い過去の出来事のようだ。  早紀は続けて、 「息子も一緒に連れて行く」  と主張する。 早紀にとって、 それは自らの同行以上に重用な事柄だったようだ。 「バカを言うな。 赤ん坊がじっと泣かずにいるものか!」  と諭した父親の言葉に、 「この子が泣くとすれば、 それは父親を見たときでしょう!(それまではわたしが泣かせません)」  と強く反駁したからだ。 ついで実の母親から遺伝した、 元よりキツイ両眼でキッと目許を睨まれると浩也はそれ以上言葉を継ぐ気になれず、
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