当夜

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 早紀が抱える赤ん坊の肌は夜目にも光沢が映え、 キラキラと耀いている。 最初の呼び名が通り名として浸透し、 今では知るものたちは彼と彼女たちをメタル・ベビーと呼んでいる。 まだ社会問題にはなっていない。 浩也が知る赤ん坊の数も――早紀の息子の塔紀を含め――日本で現在三人だけだ。 世界全体でも二十名ほどしかいないらしい。 が、 浩也の利用する情報源にも偏りがあるだろうから本当のところはわからない。  ……とすれば、 それより数は多いのか、 少ないのか?  塔紀以外に浩也が実際に目にしたメタル・ベビーは一人だけだ。 元同僚の娘が産んでいる。 出産と同時に――いや、 生まれた直後に――見た己の娘の光沢質の肌が原因で気を病み、 自殺未遂を繰り返す。 「今では精神病院内で薬漬けになっているよ」と度重なる疲労で崩れた表情のまま同僚の飯塚康平は言ったが、 あの日の彼の目にはまだ希望の光が宿っていた、 と浩也は半ば絶望的に思い返す。 その後、 飯塚康平は浩也の前から完全に姿を消し、 同時期に娘も精神病院から消えてしまう。 浩也は八方手を尽くして探したが、 未だに消息不明は知れていない。 政府機関に囚われたか、
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