当夜

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「本当に今日来るの?」 「わからんが、 おれが掴んだ情報ではそうなっている。 だが、 数日の誤差はあるかもしれん」 「もうすでに来ていて、 去って行った可能性は?」 「それはないだろう」 「じゃあ、 待つしかないのね」 「その通りだ。 ……塔紀は大丈夫か?」 「今は眠っているけど、 そろそろ起きるかもしれないわね。 そのときちゃんとお乳が出るといいけど」 「ところでおまえは本当にアレが塔紀の父親だと思っているのか?」 「もちろん証拠はないわよ。 可能性だって低いかもしれないけど確信だけはあるかな。 だって処女の女を妊娠させ、 子供を産ませたのだから、 その父親は『神』か『悪魔』か、 そのどっちかじゃない?」 「アレはそのどちらでもないだろう。 いや、 そもそも生きているはずがないんだ」  が、 浩也は自分のその言葉に確信が持てない。 ならばどうしてアレらは海へと消えたのか? そして何故、 眼下の跡地が残されたのか?  アレらすべてが何者かに根こそぎ盗まれた可能性はゼロではない。 が、 現場からかなり離れた監視カメラに映っていた映像にはアレらを盗むどんな曳航船や巨大ホバークラフトの姿も残されていない。 それに、 と浩也は思い出す。 唯一、
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