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わたしはその後も、しばらくの間、ユウに『今やってみたい事』をつらつらと並べた。
わたしの妄想や夢想を聞いて、ユウは「よくそんなに思いつくな」と半分呆れているようだったけれど。……でも、わたしは話をしているだけで、ちょっと楽しかった。
学校も、遊びも、恋愛も。わたしはこの先もずっと、経験する事なんて出来ない。
想像する事でしか、手の届かないセカイなのだから。
「……海。
今度、連れてってくださいよ」
わたしは最後に、小さな声で言った。
その時は、一緒に行くのはセンセイで我慢しますから、とつけ加える。
ユウは、気が向いたらな、といういつもの気のない返事を返し、わたしの身体を、やさしく引き寄せた。
「帰るぞ」
わたしはユウに手をひかれ――また、真っ暗な、いつもの病院へと戻された。
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