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忠元と統幸の案内で、家久と吉継の休む部屋へとやって来た忠棟は、部屋へと入ると、床に額を擦りつける様に平伏し。
「家久様ッ!!!御館様をむざむざ死なせてしまいッ!!!まことに申し訳なくッ!!!某が生き落ち延びて参りました事ッ!!!なんとお詫び申し上げればよろしいか申し上げる言葉も見つかりませんッ!!!」
そう忠棟は、ただただ平謝りした。
そんな忠棟に家久は言う。
「忠棟。面を上げよ。儂もむざむざ生き落ち延びて参ったのだ。御館様が生死を確め。御館様を救う事すらせずにな。そんな儂がお主を責める事などできぬ。御館様を死なせた責任は儂にもある」
そう言い家久は、忠棟に頭を上げる様に促し、そして忠棟が頭を上げると。
「忠棟。御館様はなんと申してお主を備中高松城へと落ち延びさせたか?」
と、家久は忠棟に問いかけた。
この家久の問いかけに忠棟は、面を上げキリリと表情を引き締めると。
「御館様は妖魔鬼神に惑わされた責任を一身に背負い。島津家をおとしめた事を悔いており島津家の行く末と島津家に従った者たちの事を家久様に託し。尼子に降るも善し最後まで徹底抗戦するも善し。全てを家久様に任せると申されておりました」
そう忠棟は家久に伝えた。
すると家久は虚空を見上げ。
「御館様…いや兄者よ。まことに勝手な申し様じゃな…。大変な事を儂1人に押し付けて自分は黄泉へと旅立たれるとは…」
と、嘆く家久に、傍らにいた吉継が、家久を励ます様に。
「家久殿…いや家久様。某も家久様を支えまする故に家久が納得するやり様でこれからを歩むべきと思います」
そう吉継が言うと、忠元と統幸も「某も家久様をお支え申します」と言い、忠棟も。
「家久様。皆が家久様の支えとなります。故に義弘様が無念を晴らしましょうぞ」
そう言って、家久に奮起を促し、そんな忠棟らに励まされた家久は。
「嘆いてばかりもいられるな。生き残った者たちにはこれからを先に逝った者たちの無念を晴らさねばならぬのだからな」
そう言い、覚悟を決めたのである。
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