第1章

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第1章

私には弟がいます。 今は、自宅にいます。 少し前まで、入院していました。 退院できてよかったのだけれど、まだ弟は治っていません。 部屋にいるのが怖くて、でも部屋から出るのも怖くて、ずっとずっと怯えています。 怖い怖いと泣くのです。 私たち家族が住んでいるのは、ほどよい田舎です。 昔は『村』でしたが、今は合併で『市』になっています。 名称が変わっても、環境が変わるわけではありません。 住宅地もあり、田圃もあり、山もあり。 バスや電車などの公共の交通機関は不便。 でも、車があれば市の中心部にも郊外の大型ショッピングモールにも行ける、そんな場所。 そんな故郷に、大した就職先はなく、大学を卒業した弟は実家に戻ってきたものの家業の農家を継ぐでもなく、バイトを始めました。 コンビニです。
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