第1章

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今日は憧れの先輩に告白するつもりだったのだ。 今持っているチョコも、ずっと温めていたこの気持ちも。 他の子の告白に『Yes』と答えている所に遭遇するまでは。 「さいあくだ…。」 相手にも言えない、叶わない事が確定してしまった行き場のない気持ち。 手作りのチョコレートがまだ私の腕の中にあることが一層つらい。 たんたんたん。 誰かがこの高台に近づいてくる音がした。 「見つけた!」 「…何。」 幼馴染の啓太だった。 「何?じゃねーよ。部活までさぼりやがって。」 「…。」 涙の後があるから顔はあげられない。 「俺、お前のチョコ貰いにきたんだ。」 「あんたのじゃないよ。」 「知ってる。先輩向けのだろ。でも、貰いにきたんだ。」 私が抱えていたチョコをするっと抜き取り手早く包装をはがした。 あ。 次の瞬間には啓太がチョコレートにかぶりついていた。 どこにも行き場がない気持はそのまま。だけど同じく行き場がなかったチョコは啓太の胃の中に入っていった。
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