第3章*夕日と代替品

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「…分かったわ。捜してみる。他に手掛かりは?」 「……うーん。特にないかな。7年も経ったからすっかり変わってしまっただろうけど。」 「そう。」 帰ったら梓に聞こう。『繭村』という苗字、7年前、幼馴染……。何かいきつく所があるかも知れない。 「はい、無事家つけたね。」 「……ありがとう。別に送ってくれなくても良かったのよ。」 「平気だよ、僕は男だし。」 彼は一緒に帰るときは、こうやって送ってくれる。構わないと断るけれど、またあの笑みを向けられては何も言えなくなる。結局は怖いのだ。彼の笑みに嫌いな人の顔が重なって、視線を逸らす以外の逃げ道を知らない。 優しさに弱くない人間なんて、この世にいるのだろうか。小さくなっていく背中を見送りながら、気を引き締めるために頬を小さく叩いた。
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