河原の一団

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「あの、そこって、どうすれば降り…」 「飛び降りろ」  一団が口を揃えてそう告げる。それに、何の冗談ですかと問うよりも早く、続きが聞こえた。 「そうすりゃ、アンタも俺らの仲間入りだ」  笑い声だけを河原に残し、その場にいた面々は一人残らず掻き消えた。それを呆然と見つめながら、俺は吊り橋の真ん中にへたり込んだ。 * * *  後で判ったことだが、俺が行った山は、事故で亡くなっている方が結構いる場所だった。  橋からの転落事故、川遊びでの水難、上流からの鉄砲水で、キャンをしていた人達全員が流されてしまったという事故もあったようだ。  俺が目にした一団は、浮かばれないそういう人達が寄り集まったものだったのだろうか。  とりあえず、問答無用で仲間に引き込まれなかったのはよかったけれど、あれ以来どうにも怖くて、趣味の山歩きをしていても、 俺は、出会う人には声をかけられないでいる。 河原の一団…完
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