愛していると告げられた。

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はっと目を開ける。 刹那、私は自分が固く目を閉じていたことに気が付いた。 胸が苦しい。 何度も空気を吸い込んでは頭が真っ白になる。  「キヨ、大丈夫か」 投げ出された私の手の上に、そっと温かい手が乗る。 思わずびくりと四肢を震わしてしまう。  目を凝らすと薄暗い部屋の中、この部屋の主がベッドの脇に座り微笑を湛えて私を見下ろしていた。 彼の表情が目に映った瞬間、うっと嗚咽を漏らしてしまう。 乗せられた温かい手に、縋りつくように指を絡めた。  「……夢でも見たか」 バリトンの効いた低い声。ごつごつした指。温かい掌。  もう嫌だと思った。 叶わない夢に期待するのも、そうして現実に裏切られるのも。 ひたむきに信じることも出来なくて、かといって恨み続けることも出来ない。 全部、投げ出してしまいたい。
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