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「しかし、学校を辞めても塾は止めねえんだな。変な奴だ」
と竜平は言うが。
「何となくわかります。相良君の気持ち」
制服姿の写真を見たせいで、尚の中の少年Aは同じ学園に通っていた『相良君』へと変化した。
「学校って緊張します。周りの眼とか、クラスメートの会話の内容とかに過敏に反応してしまう。
塾って、そういうの無しで通えるから」
「そういうもんか?」
竜平は塾など通っていない。というか、彼にそんなもの必要はない。
「塾に行くってことは、大学受験は諦めていないってことなんだろうな」
――あ、出た。大学受験……。
尚自身はまだ進路など考えていない。
――相良君は受験を視野に入れていたんだ。なのになんで……。
「それにしても、タツの奴、遅いな」
竜平が事務机に向かい、パソコンの電源を入れた。
「そうですね」
尚は上の空で返事をした。そしていつもの青いポシェットを斜めがけにして立ち上がった。
「僕、ちょっと思い出したことがあるから、塾に行って来ます」
「ナオ、どこへ行くんだ?」
尚の言葉が聞き取れず、聞き返した時にはすでにパタンとドアの閉まる音が響いた。
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