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「これが契約書」
壁際のスチール棚から、龍也がクリアファイルを取り出した。
「一応、金、集めるからさ」
――本格的だ。
クリアファイルの中から一枚の紙と、水性ボールペンが手渡された。
氏名、生年月日、血液型、連絡方法、
「僕、スマホは持ってないんです。iPodしか……」
「じゃ、後でそれにライン入れよう」
「この職業って?」
「ああ、尚なら学校と学年」
「えっと、秘密って?」
「共有したい秘密さ。
俺に知ってもらいたいけど、人には話したくないことみたいな」
――霧島尚、平成13年10月31日生まれ、O型、ライン、新栄学園中等部三年、秘密……秘密……
尚にとっての秘密は、身体のこと。
職業の欄まで書いて、ペンが止まった。
秘密と書かれた空欄の下に、
〈私は月5000円の会費と引き換えに駅前お友達倶楽部に所属し、赤星龍也と友情を交換します〉
と、書かれていた。
もう一度、龍也の顔を見る。
尚は秘密の空欄を埋めた。
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