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龍也は、全くわかっていないようだ。
「あ、それです。そのアンドロゲン。
医者が言うには、染色体は男。けれどホルモンの受容体に異常があるから、体に普通の男性のような第二次性徴の特徴が表れないんだって。
身体的に異常があるのは、そのせいだと」
プチプチと、ダンガリーシャツのスナップボタンを外す。
細身のフード付きTシャツの胸が、わずかに膨らんでいた。痩せた尚の体には不似合いな、ふくよかさ。
「下は、異様に小さいんですよね。幼児みたいに……
五年生の時、異常に気付きました」
淡々と説明する尚の目は、どこか虚ろだった。
尚のシルエットを見て、物わかりの悪い龍也も、尚の秘密を理解した。
龍也がぐっと、拳を握る。
「……異常なんて言うな。尚は、異常なんかじゃねえ。
俺の前では、できそこないなんて、二度と言うな」
龍也が震える声で言った。
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