四 尚の秘密

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 龍也は、全くわかっていないようだ。 「あ、それです。そのアンドロゲン。  医者が言うには、染色体は男。けれどホルモンの受容体に異常があるから、体に普通の男性のような第二次性徴の特徴が表れないんだって。  身体的に異常があるのは、そのせいだと」  プチプチと、ダンガリーシャツのスナップボタンを外す。  細身のフード付きTシャツの胸が、わずかに膨らんでいた。痩せた尚の体には不似合いな、ふくよかさ。 「下は、異様に小さいんですよね。幼児みたいに……  五年生の時、異常に気付きました」  淡々と説明する尚の目は、どこか虚ろだった。  尚のシルエットを見て、物わかりの悪い龍也も、尚の秘密を理解した。  龍也がぐっと、拳を握る。 「……異常なんて言うな。尚は、異常なんかじゃねえ。  俺の前では、できそこないなんて、二度と言うな」  龍也が震える声で言った。
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