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龍也の大きな手が、尚の頭をくしゃくしゃにする。
尚は戸惑うように、けれど少し嬉しそうに肩をすくめた。
「安心していいんだ」
蛍光灯が一本足りないだけで、薄暗く感じていた部屋が、とても居心地のいい場所に思えてきた。
「じゃあ、ナオは今日から、我らがお友達倶楽部のメンバーだ」
龍也が、尚の契約書を別のファイルに綴じた。
「あの、お金は明日でもいいですか?」
尚が上目遣いに龍也を見た。
「いいぜ」
しばらく気まずい沈黙が続く。
「なあ、ナオは塾に行っているのか?」
竜平が切り出した。
「はい。北口の、東一ゼミナールに月曜と木曜」
「ふーん」
「なんだ? それがどうしたってんだ」
龍也が、口を挟んだ。
「月謝は、振り込み?」
龍也をフル無視して、竜平が質問を続ける。
「いえ、月謝袋で。僕が母さんに直接……あ、」
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