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トントントン、
軽快に佐野ビルの階段を駆け上る。
お友達倶楽部に入会して早、一週間が過ぎた。
オンラインやラインでしか会わない友人、次郎長とは、憧れていたFPS(一人称視点シューティングゲーム)ですっかり仲良くなった。
未沙は再会した途端、抱きついて入会を喜んでくれた。
塾は月曜の英語だけにして、木曜日の数学は母に内緒でやめた。
もうすぐゴールデンウィークだ。
きっとこの大型連休は、楽しいものになるだろう。
そんな期待が、尚の足取りを軽くしていた。
カチャ、カチャカチャ、
ドアが閉まっていた。
「つまんないな」
すでに未沙が合鍵を作ってくれていた。
いつものポシェットから鍵を取り出し開けようとしたが、止めた。
「帰ろっかな」
広いオフィスは、一人きりだと寂しいに違いない。
ポシェットに鍵を仕舞おうとした時、背後から声がした。
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