五 落とし物は赤ん坊

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 トントントン、  軽快に佐野ビルの階段を駆け上る。  お友達倶楽部に入会して早、一週間が過ぎた。  オンラインやラインでしか会わない友人、次郎長とは、憧れていたFPS(一人称視点シューティングゲーム)ですっかり仲良くなった。  未沙は再会した途端、抱きついて入会を喜んでくれた。  塾は月曜の英語だけにして、木曜日の数学は母に内緒でやめた。  もうすぐゴールデンウィークだ。  きっとこの大型連休は、楽しいものになるだろう。  そんな期待が、尚の足取りを軽くしていた。  カチャ、カチャカチャ、  ドアが閉まっていた。 「つまんないな」  すでに未沙が合鍵を作ってくれていた。  いつものポシェットから鍵を取り出し開けようとしたが、止めた。 「帰ろっかな」  広いオフィスは、一人きりだと寂しいに違いない。  ポシェットに鍵を仕舞おうとした時、背後から声がした。  
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