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雪に誘われるように道を走る。いつもは何気ないこの道も、今この瞬間だけ特別な気がする。
今日こそは伝えるんだ。
「もー!そっちが呼びだして遅れるなんて失礼だよ!」
どうやら来るべき場に来たようだ。
目の前が朧気に見えるのは、雪の仕業なのだろうか。
けれども俺の想い人がいるのは目視できた。
「ね、今日何の日か知ってる?」
俺が頷くのを確認すると、ゆっくり歩み寄り目の前で止まる。
「これ...作ってみたの」
それは、とても温かく、愛情さえも感じた。
よそよそしい返事しかできないまま会話が途絶えた。虚ろな時間が流れる。
「なあ、今日何の日か分かるか?」
「えっ?」
「こんなもんしかあげれなくてごめんな。今日誕生日だろ?」
「うん...」
彼女はマフラーに顔を埋める。
「好きだ」「好きです」
二つの声が重なると同時に、二つの体も重なった。
雪と星の世界の下、今日は俺と彼女だけが知る、特別な日だ。
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