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「怖い思いをしたな。助けるのが遅れて、ごめんな?」
「あ……。いえ、そんな……。
大したことはされてませんし、大丈夫です」
あの客の言った通り、髪を触られただけだ。
少し首を触られたが、それも月白が助けてくれた。
そもそも、月白もお客様だ。これ以上心配をかける訳にはいかない。
無理やり笑顔を作った。
「……本当に? こんなに震えてるのにか?」
が、いつからバレていたのか。
月白の目線が、いまだ震え続ける真珠の手元に注がれていた。
「我慢するなよ」
「……あっ」
月白の大きな手に、震えを逃がす為に組んでいたままの両手が包み込まれた。
月白さん!?
――ドクン、ドクンッ!
乱れっぱなしだった鼓動が、音を立ててしまうかと思うくらい、大きく跳ね始める。
あっ、駄目!
駄目っ! 鎮まって!
「……いやぁっ! 触らないでっ!」
――パシンッ!
叫び声とともに、月白の手を振り払った真珠の手が屈み込んでいた月白の頬を打った。
「私に、触らないでっ!
月白さんなんて、大っ嫌いっ!」
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