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――紅い月が、浮かんでいる。 見上げたそれは、赤銅(しゃくどう)色に妖しく揺らめいて。 菫(すみれ)色の夜空に滲みながら、静かに光を放っていた。 夜のしじまの中。 白く浮き上がる痩身が、その光を浴びて立つ。 降る雪と見紛うほどの白銀色(しろがねいろ)の長い髪。 その瞳は、雪原を照らす月光よりも濃い、真紅。 洗練された動きで、指先が空を舞えば。 青白く透き通った肌に、舞い降りる雪片が纏わりつく。 その手のひらに乗った雪を、朱い舌がペロリと舐めた。 途端。整いすぎるほどに整った容姿が、“色”を変えていく。 妖艶に。 そして、凄絶に――――
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