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事実、その後の夕食でも月白の態度は変わらなかった。
食後のコーヒーを飲み終える頃を見計らって特製ドリンク入りのマグボトルを配った時も、静かに真珠を見つめて微笑んでいた。
あまりに穏やかな微笑みを向けられて。
うっかりと、その目元から鼻筋までの綺麗なラインに見惚れてしまったくらいだ。
「どうしよう! 私、あんなに酷いことをしたのに……。
あんな風に微笑まれて……私! どうしようっ!?」
月白の笑顔が、何度も浮かんでは消えていく。
「好きになりすぎちゃう! どうしようっ!?」
目を閉じて、浮かんでくる好ましい笑顔を想うと、真珠の両足は自然とジタバタと動き始める。
冴えた月光が窓から射し込んで、枕を抱えた真珠の背中に蒼白い光を降らす。
「いやぁんっ! 好きぃっ!」
真珠の澄んだ声が発した心からの叫びは、月明かりの空間に響くことなく、顔に押しつけられた枕の中に吸い込まれていった。
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