月夜の後悔と、秘密

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「私って駄目よねぇ。お客様相手のお仕事なんだから、どんなことがあっても感情を爆発させちゃいけないのに……」 “人型(ひとがた)”を取り続けるのは、とても容易い。 というよりも、真珠にとっては、そちらが通常モードと言っても過言ではないくらいだ。 本性は雪女だが、人型を取っている間なら、ヒトに手を触れることも出来る。 健康診断で引っかからない程度の低体温も保つことも。 ホットドリンクだって、少し冷ませば飲めるのだ。 が、ある一定以上の感情に揺さぶられてしまうと、もう駄目だ。 哀しみ、恐怖、怒り。 そういう感情が爆発してしまうと、自分の意志とは関係なく、すぐに本性に立ち返ってしまう。 今のように。 「あの時、月白さんの手をあんな風に振り払ってしまったけど……。 仕方なかったの。だって動揺し過ぎてたから、たぶんヒトの体温じゃなかったはず。 あれ以上触れられてたら“妖(あやかし)”だとバレてたかもしれない。だから――」 そう、だからこそ。 どれほど月白を慕わしく想っていても、近づいてはいけない。 どれほど惹きつけられても、近づけない。 月白がここを去るその時まで、少し距離を置いて眺めているのが、自分にはふさわしい。 静かに涙を流しながら、「あと5日」と何度も呟き続ける真珠だった。
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