紅い月と、彼の告白

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深い菫色の空に、いつもよりも大きな月が浮かんでいる。 今日の全ての作業と明日の準備を終えた真珠は、自室に戻る前にふと思いついて露天風呂から続くテラスに足を踏み入れた。 そろそろ日付が変わろうとしている深夜。 来年は、ここにジャグジーを作ると真珠の父が言っていたテラスの端まで歩いて。 そこに、ワンピースの裾をそっと押さえて膝を抱えて座った。 そのまま、じっと月を見上げている。 真っ白なワンピース姿。 星空をバックにキンと冷えた清冽な空気に身を置くそのさまは、垣間見る者が居ればすぐに心を奪われてしまいそうなほどの、幻想的な美しさだ。 しばし月光を映していた大きな瞳が、つと、揺らいで、静かに瞑目した。 そして、深く深く、長い溜め息を吐く。 まるで、心に巣くう全ての感情を吐き出すかのように。
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