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まったく、難儀な院長だな…とぶーたれながら実里はチワワと柴犬をつぐみに差し出した。
彼女は専門家ではないが、治癒能力はある。
ほんのり光を手から放ち…犬たちの傷をふさいだ。
「この子たち…お腹を空かせているの?」
様子を一目で見抜いた。
「アホな動画の材料にされたんですよ…。
とりあえず、何か食べさせてあげてください。」
「分かったわ。」
つぐみは奥の部屋に行き…何か食べるものを探した。
実里はやることはやったんで今度こそ帰ることにする。
「つぐみさん、これ…あとはよろしくお願いします。」
ペットフード代ぐらいは財布から出して、丁寧に頭を下げる実里。
少ししてから、つぐみは生タイプのドッグフードを用意し…犬たちに食べさせながらお金を受け取った。
「律儀ね、実里ちゃん。」
「一応、診療所ですから。
院長先生…野放しにしたら危ないって、能力者関連の傷は一部ボランティアで治療しているでしょ?」
一般人が興味本意で妖怪を拾い…手に負えなくなるや捨てる妖怪とかの問題も少なくない。
実里の妹の音羽(おとは)は1年ほど前…一般人が違法投棄した妖怪に襲われた。
妖怪の知識も飼い続ける覚悟もないままに、ゲラゲラ笑いかけていればなついてくれると信じている平和ボケた連中が捨てた妖怪の犠牲者だった。
幸い院長に救われたが、何か出来ないかと考えバイトをしている。
いまだに何も出来ていないのだけど。
「その律儀さが良いのよ。」
つぐみは筋を通し、骨のある実里が好きだった。
そりゃ、手足は早いが…自分の信念を持って生きられる人間は多くない。
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