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「…人として当たり前のことです。」
誉められた実感がないので、素直にそう答えた。
「それでも、夜中の帰宅は女の子としていただけないけど。」
茶化すつぐみ。
ここでのスパルタで実里はかなり変わってしまったから、女の子としての彼女に戻って欲しいというのも実里を娘みたいに思っているつぐみの願いだ。
「妖怪の患者が増えて、診療所が大きくなったでしょ?
掃除するところが増えて遅れただけです。」
妖怪の治療が出来る場所だなんて限られている。
妖怪相手が出来る根性の持ち主もそうそういない。
実里は一人でそんな場所に居座っていた。
新規のアルバイトをやすやす紹介出来る場所でもないし。
「最近では、ハカリの女子高生の行方不明事件もちょっとあるんだから。
もう少し早く帰ること。」
つぐみのくれた情報に実里は目を丸くした。
「女子高生の行方不明事件?」
「うん…最近、妖怪や魔物関連の事件によく女子高生が巻き込まれているの。
見た目には暴れたくて暴れたとか、知恵の足りない狂暴な魔物が絡んでいるみたいだけど。」
刀傷の件といい、同じような事件が続くとは何かしらの目的があるのかもしれないが。
暴れるだけの魔物なら、そんな知恵が回るかな?
何者かが裏にいるのかもしれない。
実里はガーディアンのことを思い浮かべた…隠蔽は彼らの仕事だからだ。
でも、隠蔽工作に必死な奴らが事件にする理由が分からない。
どうも変なことばかりだが、考えて分かることではなかった。
「…気をつけて帰るのよ。」
つぐみに見送られ、実里は再び病院を出た。
釈然としないものが胸にわだかまり…夏なのに少しだけ身が震えた。
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