こいつがいたら退屈も無いだろう

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とはいえ、実里はアルバイトもあるのだからエニグドさまなる者の召喚の儀式は週末に引き延ばされることになった。 もう薔薇の運命は尽きたのだから、せめて花は美しく使命を全うさせたいというのが実里の願いだった。 園芸は好きだ…花も好きだ。 しかし、好きだからすべてを守れるわけでなし。 妹を守るため戦い方を覚え…妖怪まで面倒見る病院でいつ食われるか分からん危険とじっと向き合って。 気がつけば、花には似合わない人生を送っていたなと実里はすべてを切り捨てた。 もう、花を愛でていた頃の自分には戻れない…そういう世界になってしまっていた。 「2ーDの逢垣(あいがき)…あいつ怖ぇよ。」 クラスの外から男子の不満が漏れる。 愚痴でもこぼしているのだろうが、廊下であるあたり陰口ではない。 きっと耐えられないんだろうなと思った。 「あいつ、中学の時から率先して面倒事とかやってたじゃん。 その流れでクラス長押し付けたんだけど…いろいろやらされて億劫なんだよ。 真面目な奴をクラス長にするのは地獄だぜ…規則や鉄則を強要するからな。」 真面目な奴は犯罪者と同じぐらいに嫌われる。 いや、法律で裁けない分真面目な奴はタチが悪い。 「掃除当番とか細かく決めるしな。 自分のことは自分でやれってな…オカンでも言わねぇぞ、そんなこと。」 人間として当たり前なことなのに、それすら面倒らしい。 またバカが現れたなと実里は頭が痛くなった。 「あのバケモノがいる限り俺たちは地獄だ…来年は修学旅行もあるんだろ?」 2年からのクラス替えは、まずない。 班分けは誰かが犠牲にならねばならない。 「…冗談じゃねぇ!」 男子の片方の悲鳴が飛ぶ。
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