こいつがいたら退屈も無いだろう

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「あの女が見張っている限り女子の部屋に行けねぇぞ! 修学旅行で女子の部屋に潜りこんで一晩愛を語るのは男のロマンじゃん!」 そんなロマン、聞いたことがない。 とはいえ、修学旅行では部屋の鍵が無いからな…侵入されても注意で済むし。 おまけにあとは卒業するだけだから…狙っている相手がいたら進路次第では縁が切れる。 だいたい、泊まりのイベントで真面目に部屋で寝ている奴はいないだろ。 風呂場の男湯と女湯ののれんを入れ換えるのと同じぐらい、普通にある話だ。 「たぶん、世界の終わりみたいな顔してるね。」 瑞香にも聞こえていて、彼女が小さく同意した。 恋関連では、女は男より真剣だ…今のうちに手を打たねばならないのはエロ男子以上である。 「…あいつに農薬入りの弁当でも差し出すか?」 追い詰められたエロ男子らは天下の往来とも言える場所で、とんでもないことを口にした。 「逢垣が食うかよ、そんなもん…。」 「ペットボトルのお茶をすり替えるとか。 いやいや、これは我が校すべての問題だ。 後輩への指南にもなる。」 エロ男子の夜這いの指南など後世に残すな。 自分が去った後とはいえ、母校にバカの名前を伝説として刻みたくない。 「勇者いたよ。 実里、ちょっと手伝って…。」 目当ての男がいる瑞香にも切実な問題だ。 ボカッ! 「痛っ! 何すんの!」 しかし、恋愛ごときで失うものがない実里は瑞香の頭を殴りつけた。 「犯罪者に堕ちる奴が恋愛語るな。」 正義の味方を気取るつもりはなかったが…黙っていられないのは損な性分だった。
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