こいつがいたら退屈も無いだろう

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「だいたい、実里は女の子が男に告るのがどれだけの度胸と覚悟がいるか分かってんの? 神聖な日に勇気の後押しをする必要があるんじゃない…クリスマスしかり…バレンタインしかり…よ。 恋の祝日は増やした方がいい…出会いはいつ始まるか分からないから。」 夜這いにもっともらしい理由をつける瑞香…さすがに青春真っ盛りは違う。 実里は恋愛らしい恋愛をしたことがない。 周りに恋になりそうな男がいなかったからだ。 「夏休みは40日ぐらいあるんだけどね。」 そういえば、もうすぐ夏休みだった。 学校の正面玄関にさしかかるのも相まって気持ちが軽くなる。 「夏休みは、いろいろ忙しいじゃない!」 ネタが尽きたか歯切れが悪くなる。 本当、瑞香は面白い。 バカばっかりな連中の、数少ない例外だ。 それでも、あまり積極的には会話はしないが。 「瑞香は夏休みはやっぱり部屋にこもるの?」 夏休みの話題になったので、ついでに聞いてみる。 「…そんなに薬草のストックがあるわけないじゃない。 海でも行こうかな。」 こちらも行き当たりばったり。 「海で怪談作るの?」 「…いや、潮干狩り。 薬の材料に使えるし。」 何を作るんだ。 薔薇では足りんのかこの女…まぁ…足りるとは思っていないけど。 「デートスポットで潮干狩りかよ…。 相変わらずマイペースだな。」 バカの考えは読めない。 「実里は何をするの?」 何も予定はなかったが、何かしないと潮干狩りの手伝いに誘われる。 「バイトと勉強に決まってるんでしょう。」 「…院長先生狙い?」 自分よりも深い付き合いの助手がいるのに、何を言ってんだ。
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