こいつがいたら退屈も無いだろう

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「院長先生はあたしの好みじゃないし、つぐみさんに勝てる気しない。」 正直に言い放つ。 花を愛でていた頃から、恋愛のタイプにはうるさいのだ。 乙女心と純愛を信じているし。 「睡眠薬とか、使えるものは何でも使いなよ。 今なら、いい香水お分けしまっせ。」 こいつはお人好しで度胸はあるが、時々行動と発言が過激だ。 …悪徳商人が現れた。 「いらねぇよ!」 ボカッ! さらに強く、実里は瑞香を殴った。 その二人のやり取りを遠目に見ている者がいた。 (…何やってんだろ。) ボーイッシュな青い髪の少女。 険が強く、それでいて清廉かつ凛とした少女だ。 やけに大人びている。 例えるなら、実里が花…少女は剣だ。 柔らかさとひたむきさが二人並ぶとよく見えるかもしれない。 「ああ、逢垣さん!」 瑞香が少女に声をかけた。 「あの…修学旅行の夜這いだけは許してあげて。 みんな楽しみにしてるんだ…あれ?」 覆水盆に還らず…急いでいたので、言うべき言葉を間違ったらしい。 「誰が夜這いだ! 生徒間の交流でしょうが!」 実里が訂正する。 しばし逢垣聖奈(あいがきせいな)は面食らったが、すぐに返答が返る。 「そんなもん、許すわけないでしょうが!」 意外に話がしやすい女の子だ。 「…ったく、今日うちのクラスの男子を突き出したのはあなたね? 掃除屋実里。」 聖奈は実里に頭を下げる。 「学校の風紀をありがとう。」 むしろクラス長としては余計なことをすんなと怒鳴られると思ったが。 礼儀正しいなと実里は思った。
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