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「エニグドさま、エニグドさま…あなたの巫女に降臨を。
おいで下さい、おいで下さい…そして願わくは私の頼みも聞き入れたまえ。」
エニグドさまにイケニエを紹介する代わりに何かくれって言ってるよ、この女は!
実里にもそれぐらいの話は分かった。
しかし、もともとエセ怪談だし…後で2発殴っておけば済む話だろう。
そういうつもりで実里は黙っていたのだが。
「エニグドさま、エニグドさま…。」
いつになく真剣な瑞香。
カーテンの外の光を少しだけ取り入れ、謎の儀式は続く。
カラッ…。
「窓開けんな!
人に聞かれるだろ!」
迷惑はかけないはずが、ついに近所迷惑に突入した。
「エニグドさま、エニグドさま…。」
何回祈るんだ。
来るまで待たされたら、付き合う方は迷惑だぞ。
そう、実里が思ったときだ。
「げっ!」
窓の外から鏡の破片みたいのがふわふわ飛んで来て瑞香の部屋に入ってきた。
大きさは手のひらに乗るぐらい…蹴りが当たるか不安である。
ピカッ!
「きゃっ!」
太陽の光が鏡に反射して、目が眩む。
「エニグドさまだよ…エニグドさまが来たよ!」
瑞香はしきりに喜んでいるが…何でエセ怪談の産物が本当に現れたのか。
そもそも、本当にその物体はエニグドさまなるものなのか…?
エニグドさまを知らない実里には判断出来ない。
「…実里、エニグドさまを受け取って!」
瑞香は実里を急き立てる。
「いらねぇよ!」
だが、もちろん答えはノー。
言葉すら発しない無機物とどうやってコミュニケーションを取れというのだ。
迷う間にも鏡の破片は迫ってくる。
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