エニグドさま

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―下手な嘘はやめておけ。 お前、何か隠していることがあるだろう。― エニグドさまは、ぼかす実里の言葉を貫いた。 ―すべてが穏便に丸く収められるほど、世間は甘くないぞ。― 「そんなことは、人に話して分かるようなことじゃなし…。」 ふてくさる実里。 「…それに、こんなことになるなんて思っていなかったし。」 奉領鏡明王の巫女だって聞かされてはいたが、無関係ともいえる飛行物体に取りつかれるとは予想外だ。 「口止めされているし。 助けてもらったようなものだから…あまり裏切りたくない。」 ガーディアンは嫌いだが、本当なら消されているところを見逃してもらったのだ。 それを売るのは義に反する…まだ諦めたわけじゃないが。 実里はひとつの決意を固めた。 ―美徳だな。 いつかつけこまれるぞ。― 弱いな、とエニグドさまは思った。 美徳だが、愚か過ぎる。 人は何でも利用するのは当たり前なことだろう。 使えそうなら、なおさらだ。 しかし、信頼関係を築けばいつかは話すだろう。 美徳を誇りとしたいなら、その点は共感できなくもない。 「性分なんだ…バカにはなりたくない。」 自らの誇りを守ること。 それが彼女の強さだと思う。 ―…まったく。― 「ん、んん…。」 呆れたエニグドさまがため息をつくと、瑞香が目を覚ました。 「瑞香?」 実里は瑞香を起こす。 「ああ、実里。 エニグドさまは来た?」 やり取りからして瑞香は何も覚えていないようだ。 「いや、何も。」 実里はエニグドさまを隠してとっさに嘘をつく。 「今度こそ成功すると思ったんだけどな。」 この女、何も覚えていないからまったく懲りてない。 霧の方の手を打たないと、また同じようなことが続くだろう。 説明も出来ないから厄介だ。
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