エニグドさま

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「絶対成功せんから諦めろ。」 素人が余計な口出しをしても納得なんかしないだろうな。 しかし、あの神楽舞はやめて欲しい。 もっとも、変な儀式をやらないだけで一般人全員が同じことを言えるけど。 「やっぱり月光が足りないのが悪いのかな? ほら、外灯とか入るじゃん?」 前にもそんなことを言っていたな。 てか、月光がどこに使われていたか分からない。 「月光って何だよ。」 「企業秘密だから伏せとく。」 実里が突っ込むが、瑞香は教えなかった。 「てか、企業秘密って売るのかよ月光を商品にして!」 それこそ変な商売だ。 詐欺で捕まるかもしれない。 「売れるところには売れるよ。 パワーストーンの浄化とか、恋のおまじないとかにいい材料なんだ。」 半ば本気だ。 女の子ってまじない好きだからなぁ。 ―プロでもないのに月光が扱えるか…真性のアホだな。― 「千円ぐらいなら、良心的だよね。」 エニグドさまは突っ込むが、瑞香には聞こえていないようだ。 「売るな!」 実里は全力で阻止を試みる。 とはいえ、エニグドさまはあの霧が日常と非日常の境界をこじ開けていると言っていた。 瑞香にとってはどちらにいるのが幸せなのだろう? 自分を理解してくれない人間の世界で、窮屈に生きる。 そんな中でも、瑞香は誰かと繋がりを持とうと努力していることを実里は知っていた。 だが、日常が非日常の世界に変わったとき…彼女の強さは神にも匹敵するのだろうな。 彼女にとって、どちらの世界が幸せなのか…。 親友の姿を見て、実里はふとそんなことを考えた。
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