エニグドさま

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一方、その頃…。 「緋刀・陽光(ひとう・ようこう)が消えただと?」 青年とも少年ともつかぬ若い怒号が、とある建物の中にこだました。 おそらく一般の民家の個室だと思われる。 声の主は赤毛の短髪の青少年だ…ジャンパーにデニムのパンツ…どこにでもいそうな風体の人間である。 ただし、その殺気立った表情と残酷な言葉を除けば。 彼はいろんな意味で人間ではなく、もっとも人間らしい人間である。 詳しく話をすると、彼は数ヶ月前までは民間人だった。 超能力事件に巻き込まれて覚醒したときガーディアンに保護されたのだが、もともとは民間人である。 組織育ちの感情論が通じないメンバーと反りが合わず、かといって秘密保持のため組織を抜ける事が出来ない。 彼はそういう人間を集め、ガーディアン内でテロを起こしている人物である。 武器のチンピラへの横流しもそのためだ。 陽光はガーディアン内の刀のひとつ。 もともと、スカウト組と呼ばれるもと民間人と組織のメンバーの仲裁をしていたガーディアン幹部が使っていた刀だ。 それら数本の刀を盗み出し、組織とチンピラのテロの間を行き来させているのがこいつらである。 もっとも、一筋縄ではいなかったが…黙っていたらいろいろ差別されるし。 なにぶん、組織育ちの人間のほとんどはスカウト組を差別している。 スカウト組の感情論から任務に失敗し、生き残れないメンバーが結構いるからだ。 背中を預けられるほど信頼出来る仲間を失ったため、むしろ恨む者すら少なくない。 だから、組織育ちはスカウト組から仕事を奪って格差を広げようとする。 スカウト組にも守らねばならないものがあるのだ。
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