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IMAKAMIの奥には大理石のような硬くて白い秘密の談話室がある。
院長いわく結界の一種で、ここが中立である特徴のひとつだ。
しかし、中立を貫くのもそろそろ限界かもしれない。
組織のしがらみは嫌いだが、そんなことばかり言ってはいられないのだ。
ー懐かしい気を感じる。ー
清流のような声が聞こえた。
ー私たち五飾神の源。
この時をどれほどお待ちしていたことか!ー
大理石の部屋の中で銀色の光がゆらめく。
それはひとつにまとまり、知的な学者のような若い男性の姿になった。
今噛 佑…五飾神の一人の白蘭である。
「五飾神の源って…ええと…!
奉領鏡様?」
実里は混乱しているが、奉領鏡明王しかいない。
ー五飾神の源…あいにくと私にその実感は無いな。
肝心の記憶が無いから。ー
とはいえ、エニグドさまに守り神の実感は全く無い。
いきなり世界を守れとか言われても困る。
ーあなたが月真に魂を砕かれたとき…記憶が行方知れずとなりました。
地上にも神の記憶の気配はございません…そうなれば、虚ろに溶けて見えないのでしょう。
この町はあなたの身体であるゆえ、ここから離れることは出来ません。ー
院長は、鏡のかけらに深々と頭を垂れた。
きっと地上にありながら地上ではないところに隠れているということか。
そんな場所は見当がつかない。
それにしても、鏡のかけらと喋る院長は人間の実里にはかなり異様な光景に見える。
やはり神と人間は違うのだが実里も足を突っ込んでいる。
早く慣れねばならない。
「院長、このエニグドさまが守り神として…どうやったら彼はもとに戻れるんですか?」
実里は院長に迫った。
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