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表向きはチンピラの暴行事件らしいが…超能力事件とチンピラの絡みが珍しくないからといってそんなにぽんぽん出くわすかな?
奉領鏡明王の不在で街中が混乱しているとはいえ…だいたいそんなに刀傷関連の事件ばかりが…。
実里は考えてみたがまったく分からなかった。
なにぶん情報が少なすぎるし。
とにかく、チワワと柴犬を何とかせねばならない。
実里は細腕でもない鍛えた筋肉で犬2匹を担ぎ上げて、来た道を戻った。
―似ている…。―
まったく関係無いが、その背中を視線で追いかけるひとつの影があった。
実体のない、少年のような影…小学校2年生ぐらいだ。
瞳は翡翠のような虚ろ、亜麻色の少し長めの髪の毛。
服装は室町時代あたりの和装といった感じか。
体格は子供でも、その虚ろな瞳ははっきりと実里を捉えていており大人びて見えた。
―かすかに星が見える。
ひとつ見失えば、消えてしまうほどのいくつかの星が。―
導かねば、と思った。
何も知らない、目覚めかけた巫(かんなぎ)…すなわち巫女。
何も知らぬまま、闇に迷うことがないように…それがチカラを持った者の宿命だ。
彼は、そう信じている。
信じているからこそ必要であり…かつて失った過ちを繰り返す愚か者。
彼の名前は翠緑玉鏡(すいりょくぎょくきょう)。
檸檬降市のすべてを変えた月真の相棒だった五飾神のひとりである。
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