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「今噛(いまかみ)院長!」
バイト先である動物病院IMAKAMI(イマカミ)に戻るや、ドアを開けて実里は大声で院長を呼んだ。
「実里ちゃん…佑(たすく)さんならいないわよ。」
ドアの向こうからロングヘアの美人医師が現れた。
今噛院長の助手のつぐみさんである。
プロポーションが良いので、怪我したペットをダシにして病院に治療にやってくるバカがまれに現れる。
なぜバカというのかはあまり口にしたくないのだが…女って罪よねと笑っていた彼女は強かな人間だ。
もちろん飼い主から患者のペットは引き離されたが。
「正確には佑さんならここにいるわ。
しかし、今は普通の人間には見えないんだったわね。」
そうなのだ…ついでに言うと声も聞こえない。
今噛 佑…本名白蘭石鏡(はくらんせききょう)は五飾神のひとりだ。
簡単に言うと、檸檬降市の守り神が奉領鏡明王…五飾神はその直属の部下だ。
奉領鏡明王はかつて、人間の信仰の力をもって戦力とするともに人間社会に深い関わりを持っていた。
しかし、不可侵条約や不和だなんだといろんな問題が起こり…ガーディアンとともに人間社会と能力者を切り離している。
それでも絶対ではないので、地上の人間に与えた最後の救いが白蘭だ。
呪いやチカラに関する特殊能力の治療の専門家で、不慮の事故などでそのまま助からないことを防いでいるのだ。
もっとも、神と人間が隔絶された世界では最後の慈悲もうまく噛み合わないだろうけど。
奉領鏡が月真に砕かれ、五飾神もその影響を受けた。
院長は人間社会との接触を絶たれたのだ…妖怪や超能力者など人間社会に深く関わらない存在の治療は出来るけど。
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