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両親を亡くした子供の多くは、親戚に引き取られるケースが多いようだったが、親戚もいない子供は施設に入っていた。
私は、施設を訪問して、そこで暮らす子供たち一人ひとりに声をかけ、話しを聞いていった。
どの子供も両親を亡くした悲しみや心に傷を負っていた。
このようなボランティアによる訪問は、定期的に行われていて、私もできるかぎり参加した。
ある日参加したボランティアでは、公共施設に16世帯の孤児と遺児24人が集まっていた。
ランチを一緒に食べて、レクリエーションで楽しんだ後、1人ずつペアを組んで、親を亡くしたことを語り合った。
私がペアを組んだ子供は、小学6年生の大輝(だいき)君という名前の男子で、小学1年生の時、大震災の津波で両親を亡くしたという話だった。
この大輝君が、淡々とした口調で話をする姿を見て、私は胸が痛んだ。
私は、この子供たちのために、何ができるだろうか…
たぶん特別なことはできないだろうと思った。
でも、まずはこのボランティアに参加して、私ができることを模索していくのもいいだろうと考えた。
私は、大輝君に、自分は大震災で妻と息子を亡くし、台風で娘を亡くしたことを話した。
この話をすると、大輝君は私に親近感を持ってくれたようだ。
私は、大輝君と大震災の辛かったできごとを話し合い、心が打ち解けたような気がした。
このように私は、大輝君の話を聞くことしかできなかったが、大輝君の心が少しでも癒されればありがたいと心から願った。
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